平安殿

伝統の技を次代へつなぐ
時代の変化とともに変えること、変えないこと

平安神宮の参道に店を構える京銘菓の老舗「平安殿」の店頭ポスターやウェブサイトのリニューアルをフィールドが担当しました。その暖簾を受け継ぐ三代目に、お店を守ることやこれからの広報についてお話を伺いました。

創作のヒントは身近な日常から

下田(株式会社フィールド): 今日は宜しくお願いいたします。こちらのお店はいつ頃から?

小川様(平安殿 三代目): 常今年で創業65年目になります。私の祖父と祖母が、現在のお店から歩いてすぐの場所で商売をはじめました。当時は戦後で、甘いものが手に入りにくい時代でしたので大変重宝されたと聞いています。その後少しづつ商売の規模が大きくなってから、現在の建物に移転しました。ここは大正時代に建った洋館で、元は財閥の方の別荘だったものを改装して利用しています。今でも2階に上がると当時の部屋が残っているんですよ。

下田: なるほど、店構えに品格があって本当に素敵です。ショーケースを拝見すると、ここ京都・岡崎の地に因んだお菓子が色々と並んでいますね。

小川様: そうですね。銘菓「インクライン」はこの周りに流れる琵琶湖疏水を行き来していた船をかたちどったものですし、うちの代表銘菓「平安殿」は、かつて平安宮で用いられた緑釉軒丸瓦をモチーフにしています。こちらはわざとひび割れ文様を入れているんですが、ちょうど良いひび割れ具合になるように毎日の気温や湿度によって、粉の量や種類を変えたり、焼く時間や温度を変えたり…調整が必要で、笑。

インタビューイメージ

下田: それは大変。でも古い瓦をお菓子のデザインに取り入れるなんて、とてもお洒落ですね。新商品はどんな風に生まれているんでしょう?

小川様: 新商品を作ろう、作ろうと考えて作ったというより、ふとした思いつきから、という気がします。創業者である祖父も、現在の社長である父も骨董が趣味で、かつてこの地域一帯で盛んに作られた陶器・粟田焼が好きなんです。その窯元が残すところ一軒にまで減ってしまった時、父が大好きな陶器をお菓子にして残そうと思い立ったのが銘菓「粟田焼」の誕生に繋がったということです。これは茶色い焼き色が粟田焼を想像させる醤油風味のお饅頭で、うちの人気商品です。私は釣りが趣味ですので、骨董品の良さに目覚めるのはまだまだ先になりそうですが、笑。

三代目の変えること、変えないこと

下田: これから三代目の時代になっても、守っていきたいこと、変化させていきたいことはどんなことですか?

小川様: うちは売り方は下手なんですが、お菓子の作り方や配合は昔と変えず、素材はその時に手に入るなかで一番良いものにこだわって、とにかく味で勝負しているお店です。
時には天候の影響で、いつも仕入れている産地の小豆の味や香りが落ちてしまうということもあって、その場合は京都中を探して、妥協せずより良いものを仕入れるようにしています。
実は時代の流れとともに、材料を少し安価なものに変えてみてはと研究してみたり、作業の機械化を試みたこともあるんです。でもやっぱり何か違う、前の方が良かった、ということで結局は元に戻しました。ご覧の通り、餡作りなど全て手作業でやっています。贔屓にしてくださる常連さん方に「美味しい」と言っていただけることで、何とか続けていられると考えていますので、不器用ながらでも、味だけは自信を持って、変えずに守りたい所です。
ほかに変えずに守っていきたいのは包装紙などで創業当時から使っている「柄」です。平安殿はかつて日本包装紙コンクールで最優秀賞をいただいたこともあります。時代の変化とともに、例えばお菓子の写真や絵を使うなど、別の可能性も考えられるとは思いますが、風格を守るという意味で見た目も変えずにいきたいと思います。
反対に変化させていきたいのは、業務オペレーションの改善や、オンラインショップでの販売促進など、新しい技術によって可能になってくる部分です。
お菓子を作る技術やセンスはまだまだ先代にかなわないですが、これは私が率先して少しずつ進めていっているところです。守るべき部分をしっかり守りつつ、時代にあわせて変化させるべき部分は良い方向に変化させていくということが私の役割だと思っています。

下田: この夏に弊社で平安殿様のオンラインショップのリニューアルを担当させていただきました。

小川様: そうですね。フィールドさんとは昨年、店頭用ポスター制作をお願いしたのがきっかけでお付き合いがはじまりましたが、ポスターの出来映えを大変気に入りまして、次は古くなってしまっていたオンラインショップを時代に合うものに変えたいとご依頼しました。
リニューアルしていただいて、スマートフォンからも注文しやすく、クレジットカード決済も可能になるなど、お客様にご利用をしていただきやすくなったのではないかと思います。これで旧式のサイトから、やっと「普通」の状態になったということだと思いますので、今後はこれまでのお得意様も大切にしながら、若い世代の方や、遠方にいらっしゃる方にも弊社のお菓子を知っていただけるよう、新しい技術や感覚を持ったフィールドさんにお力添えいただきながら、日本全国、より広い層へと発信して行きたいと考えています。

平安饅頭

下田: 私どももオンラインでの発信と、オンラインショップを認知していただくための店頭用カードや、まだ和菓子に馴染みのない方に向けたパンフレットといった紙ツールなど、様々なご提案をできればと思います。ぜひ今後とも宜しくお願いいたします。

平安殿 ブランドサイト
古都名物 平安殿 商品ポスター

聞き手 下田真弓(株式会社フィールド)

小川さん、竹本さんINTERVIEW GUEST (左)小川亮 さん:平安殿にて販売・営業・製造など幅広い業務全般に携わる若き三代目。高校卒業後、名古屋の和菓子店に約2年間修行に入った後、他の業界も経験して現在に至る。
(右)竹本 さん:この道15年。「栗きんとん」や「そすいもち」などの生菓子や、餡炊きなどを担当するベテラン和菓子職人さん。